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2025/04/30

【事故調査】250222・比良山系堂満岳・雪崩事故

2025年2月22日に比良山系堂満岳(滋賀県)で発生した雪崩事故について、当事者から日本雪崩捜索救助協議会に対して情報提供があり、概略を整理致しました。この資料は「協議会に加盟の各組織での雪崩教育の現場での活用に限る」という条件でご提供頂きました。 
  
●事故概略●
日 付: 2025年2月22日
時 刻: 14時10分
場 所: 堂満岳第二ルンゼ(地形図
  
概 略:ルンゼ遡行を目的に登山者5人グループが堂満岳に入山。堂満岳に登頂後、第二ルンゼを下降中に雪崩を誘発。4人が流され、1人が完全埋没、1人が部分埋没した。完全埋没者の発見に時間を要しため、被災者は低体温症となり救助を要請したが、その後、回復し、自力下山した。
  
250222doumandake_map.png
図1 現場地形図
雪崩誘発点(標高958 m) 完全埋没点(標高835 m) ビバーク地点(標高769 m)

 
250222doumandake_startzone.png
写真1 第二ルンゼ取り付き付近
  
●行動●
9時頃、登山を開始。10時過ぎに第一ルンゼに取り付き、13時半前に堂満岳に登頂。その後、14時5分に第二ルンゼ取り付きから下山を開始し、14時10分に雪崩が発生。下山時、5人は一列で下降。P1がグループを先導し、その後ろ10m離れてP2が続いた。P2の後方20mにP3とP4、さらにその後方10m離れてP5の順序であった。雪崩はP5の足元で発生し、下方にいた4人が雪崩に流された。
  
●気象状況●
天候は、曇り時々雪。午後から雪が降り始める。気温-5℃。稜線では風速10 m/s程度の南風ながら、ルンゼ内は無風。山麓のアメダス南小松(標高90 m)にて、17日から21日までに37.5 mmの降水を観測。また、現場から北西に10 kmの地点にある国土交通省観測所・古屋(標高420 m)にて17日午後から21日昼までに70 cmの積雪深増があった。
   
●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩
規 模: サイズ1.5(流下距離・約230 m)
標 高: 958 m
方 位: 北東
破断面: 厚み10 cm程度、幅 不明
弱 層: 不明
滑り面: 不明
  
250222doumandake_track.png
写真2 第二ルンゼ
先頭で下山するP1。雪崩は、この1分後に発生
  
  
●捜索救助●
雪崩発生後、P3とP4は10mほど流され、埋没なく、いずれも自力で脱出。P1は右半身が肩まで埋没。身動きができないため、仲間が掘り出しを試みるが、ショベルがないため、デブリからの脱出に10分ほどを要した。14時45分、警察への通報を試みるも電波がなく断念。完全埋没したP2を探すため、ピッケルでのプロービングを実施。しばらく捜索を続けると、P1の埋没点の斜面上方10 mの場所でピッケルがザックにヒット。すぐに掘り出しを行い、15時30分、P2を救助した。伏臥の体勢で埋没深90 cm。
  
P2は、怪我なく、意識ありであったが、ウェアが濡れたため、救助後に急速に身体が冷え、硬直し、衣類の重ね着なども困難となった。また、お湯なども飲んだが効果は乏しかった。15時45分、下山を開始したが、P2は嘔吐をするなどして、すぐに行動不能となった。16時頃、消防と連絡が取れ、現場での待機指示が出たため、ビバークの準備に入る。また、P3とP5が救助のトレースを付けるために下山し、20時頃、消防と青ガレで合流。その後、天候や地形等の状況から、当日の救助断念の連絡が入る。20時30分、P2の体調が戻りつつあること、ビバークのリスクなどを勘案し、自力下山を決断。P1、P2、P4は下山を開始。21時半頃、登山道に合流し、23時に登山口であるイン谷口に到着。

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