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2025/01/18
2025年1月16日に岩木山(青森県)の北面で発生した雪崩事故について、関係者の聞き取り調査を行い、概略を整理しましたので、お知らせ致します。
●事故概略●
日 付: 2025年1月16日
時 刻: 12時30分頃
場 所: 岩木山・北面(地形図)
概 略: 山岳での滑走を目的とし、装備と準備の整った経験豊富なグループのガイドツアーが入山。3番目の滑走者が当該斜面に入ったところ、雪崩を誘発。誘発者は雪崩から逃げることができたが、下方で待機していた2人が雪崩に流され、部分埋没。2人は別のガイドらによって救助された後、自力下山した。
図1 現場地形図
●行動●
当該グループ13人(ガイド2人・顧客11人)は、扇ノ金目山の西側にある尾根を使い、登行。標高1,200 m付近まで到達すると、最初にガイドAがスキーカットを試みた後、滑走。その後、顧客が一人ずつ斜面に入った。ガイドAと顧客Aが滑走を終え●の地点でリグループ。次に顧客Bが滑走を開始し、雪崩を誘発。顧客Bは流されながらも雪崩から離脱。待機位置の2人は雪崩に巻き込まれ、140 mほど流されて✖の位置に部分埋没した。
●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩
規 模: サイズ2.5(流下距離・約950 m)
標 高: 1,100 m付近(上部破断面)
方 位: 北
破断面: 幅 100 m、厚み 不明
弱 層: 不明
滑り面: 不明
写真1 発生区の様子
●捜索救助●
雪崩の発生後、ガイドBと顧客3人によって捜索活動が開始され、すぐに掘り出しが完了。顧客Bに腰の痛みがあったため、救助を要請。その後、同じ山域に入山していた別のガイドグループの応援を得て、全員が自力下山。ガイドAと顧客Aはスキーをロストしたため、ツボ足での下山となり、入山口まで1時間半を要した。ガイドAは擦過の軽傷、顧客Bは検査のため病院へ搬送された。
●補記●
一部報道において弊組織理事のコメントとして「雪崩地形に入らないようにして事故を防いでほしい」というテキストが流れていますが、そのような発言はなされておりませんので、ご承知おきください。滑走に適した斜面は、多くの場合、雪崩発生区であり、そのような地形で安全に活動するための手法等について教育やサポートを行うのが弊組織の役目だからです。
バックカントリースキーとは「山スキー」の今日的な呼称です。山スキーは、スキー場が生まれる以前から登山を含む山岳活動の一部として存在しています。よって、バックカントリースキーの定義として「スキー場のコース外を滑走する」とか「スキー場の管理区域外を滑る」といった、スキー場を枕詞として表現することは、その歴史的・文化的背景を無視しており、不適切です。また、安全対策および安全教育の立場からも、山岳とスキー場では、危険の程度が完全に異なるため、「コース外」といった誤謬を招く言葉を、私たちは使いません。
日本雪崩ネットワークは様々な情報を提供するために、日々活動しております。今後も持続し続けて行くためにも皆様のご協力が必要です。