NEWS
2023/12/03
2023年11月21日に立山雄山(富山県)で発生した雪崩インシデントの現場調査と関係者からの聞き取りを行いましたので、お知らせ致します。
●概略●
日 付: 2023年11月21日(火)
時 刻: 15時頃
概 略: 雄山西斜面のシュートの滑走を計画した3人パーティにおいて、3番目の滑走者が雪崩を誘発し、部分埋没。近傍にいた行動者の協力を得て埋没者は掘り出され、怪我なく生還した。
図1:現場地形図 赤丸付近が埋没点
●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩
ウインドスラブ
規 模: サイズ2.5(流下距離約780 m)
標 高: 2,850 m
方 位: 西
破断面: 幅40 -50 m、厚さ10 - 250 cm
弱 層: こしもざらめ雪(やや丸みを帯びる)
滑り面: 氷板
写真1: 発生区と破断面 誘発点=T
●行動●
山スノーボード歴10年ほどのAとB、経験数年のCの3人パーティが、雄山西斜面シュートの滑走を計画。A、Cの順番で一人ずつ滑り、安全と思われる場所で待機。最後にBが滑走を始めると、すぐに雪崩を誘発。足元をすくわれ、尻もちをつき、そのまま座位の状態で流下が始まる。少し流されたところで雪崩の流量が増えたが、座位の状態を保ちつつ約480 m流され、首から下が埋没して身動きできない状態で停止。
写真2:現場全景 右下の赤点線丸が埋没場所
●捜索救助●
雪崩が停止したとき、別パーティの単独者Dが10 mほどの距離におり、すぐに救助に入った。AとCは、当初、Bは上方斜面にて雪崩からエスケープできたと思っていた。ところが、下方デブリ上にて活動するDに気づくと、それにAとCも合流。Bの掘り出しを行った。流下途中でスノーボードが岩に当たり破損したが、Bに怪我はなく生還した。
●補記●
雪崩事故の翌日、発生区周辺にて積雪観察等を実施した結果、やや丸みを帯びたこしもざらめ雪を氷板上で確認しましたが、その形成の状態は不均一かつ場所でのバラツキがあり、かつまた、その強度においても顕著な脆弱性を観察できませんでした。
これらにより、雪崩は、硬いスラブと、とても硬い氷板の間に、やや強度のある弱層が挟まった積雪構造で発生したとと考えられます。滑走者による誘発は、積雪の薄い局所でなされており、スラブと滑り面、いずれの硬度も高かったことが、破断面が大きく広がった原因となります。
現場地形は、発生区および走路内に「地形の罠」となる露出した岩があり、また、走路全体が地形の罠の要素を持っています。遭遇者が雪崩に流されている間に、露出した岩に激突しなかったのは幸運でした。また、発生したデブリ量から考えても完全埋没しなかったことも幸運でした。
写真4: 最上部破断面の様子 調査時の撮影
日本雪崩ネットワークは様々な情報を提供するために、日々活動しております。今後も持続し続けて行くためにも皆様のご協力が必要です。