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2023/03/23

【調査速報】220319・甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根・雪崩事故

2023年3月19日、甲斐駒ケ岳(山梨県)の黒戸尾根で発生した雪崩事故について、概略を整理しましたので、お知らせ致します。数値等は速報値ですので、この後、変更される可能性もあります。
  
●事故概略●
日 付: 2023年3月19日
時 刻: 6時4分
場 所: 黒戸尾根(地形図
概 略: 積雪期の甲斐駒ヶ岳に登頂経験がある6人の登山者がグループを構成。早朝に七丈小屋を出発して登高していたところ、ダケカンバの疎林にて雪崩を誘発し、全員が流された。完全埋没者はいなかったが、樹木に激突するなどして4人が負傷し、消防のヘリコプターにて救助された。

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図1 黒戸尾根(地形図)

●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩(ストームスラブ)
規 模: サイズ1.5
標 高: 2,565 m付近(上部破断面)
方 位: 東
破断面: 幅 22 m、厚さ平均40 cm
傾 斜: 50°
弱 層: 新雪・こしまり雪
滑り面: 融解凍結クラスト
補 記: 新雪内に低密度の脆弱な箇所があり、その上に風で移動した雪が載ることで逆構造の不安定性が生じていたことが雪崩の原因。

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写真1 発生区

●行動●
6人は4時30分頃、七丈小屋を出発。スノーシュー(2人)が先行し、ワカン(4人)が、それに続く形態で登高。これまでの黒戸尾根での登山経験から、積雪期における当該斜面の危険性をある程度認識しており、通常トレースが入る場所よりもクライマーズ・ライト側(写真1・右端)にルートを設定していた。トップが2番手からやや距離を保ちつつラッセルをしていたところ、トップの左前方(3 m先)にクラックが入り、雪崩が発生。全員が流された。グループは全員、雪崩対策装備を不携帯であった。

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写真2 走路

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写真3 走路(黄蓮谷方向)
  
●捜索救助●
6時4分、雪崩発生。トップは10 mほど流されて停止したが、2番手は遭遇メンバーで最も下方まで100 m以上、流された。また、雪崩に流される途中、メンバー同士の衝突や樹木への激突があり、4人が怪我を負った。事故発生後、直ちに七丈小屋および警察に通報。そして後方から登高してきた単独登山者2人の協力を得て、行動不能2人の保温、および負傷1人の小屋までの下山の付き添いが行われた。8時40分、防災ヘリによって行動不能の2人が救助され、その後、小屋に下山していた1人も同様に防災ヘリで甲府市内の病院へ搬送された。他3人は怪我人の搬送がなされた後、自力下山した。

●補記●
気象警報が発令され、短期間での多量降雪があった直後の事故。低気圧による結束性の弱い雪が多量に降っており、このような場合、林間であっても「斜度」が十分にあれば雪崩は容易に発生しえます。
参考リンク:雪崩の基礎

  

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