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2023/02/03
2023年1月31日に伯耆大山(鳥取県)で発生した雪崩事故について、関係者への聞き取り調査を行い、概略が整理できましたので速報としてお知らせ致します。数値等は速報値ですので、この後、変更される可能性もあります。
●事故概略●
日 付: 2023年1月31日
時 刻: 11時頃
場 所: 二ノ沢
概 略: 二ノ沢で行動中の3人グループ内の2人が、待機位置を変更中に、上部で発生した雪崩に巻き込まれた。2人は標高差で370 mほど流され、危機的な部分埋没をしたが、雪崩に遭遇しなかった仲間が捜索救助活動を実施。通報を受けた消防が怪我を負った2人を搬出した。
図1:伯耆大山二ノ沢(地形図)
●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩
規 模: サイズ2.5
標 高: 1,700m(上部破断面)
方 位: 南
破断面: 幅 約20 m、厚さ50 cm
傾 斜: 不明
弱 層: 不明
滑り面: 不明
●行動●
1月31日午前5時、登山を開始。天気は晴天。南西の弱い風が吹き、前日夕方からの降雪量は10-15 cm。夏道をアイゼンで登行し、9時40分頃、弥山山頂に到着。近傍の斜面で積雪観察などを行うことで状況判断をした後、滑走ルートを二ノ沢に決定。
最初にAが滑走し、ライダーズ・ライトの岩陰の安全地帯(図1内のR)でリグループ。積雪表層でスラフが出ることを、上部で待機する2人に伝達。二番目にBが滑走し、Aと同じ安全地帯で停止。Cが別のラインを滑るため、滑走を目視できるところへAとBは安全地帯から出て移動を始めたとき、上部で雪崩が発生し、巻き込まれる。雪崩はCから離れた地点から発生しており、その際、Cはスラブが破断する音を聞いた。
●捜索救助●
雪崩発生後、CはAとBに無線で呼びかけるも返答がないため、すぐに雪崩ビーコンによる捜索を開始。シグナルを捉え、近づくとAを目視で確認。Aは、ほぼ完全埋没に近い状態であったが、自力で脱出。しかし、肩を痛め、行動不能。CはAのシグナルをマーキングし、捜索を続行。すぐにBのシグナルを捉え、接近すると、雪面からBの左手、左足、顔が出ていることを視認。掘り出しを開始するが、開放骨折が判明。自力下山が困難なことを含め、最悪の場合、命に関わる事態もあり得るため、速やかに救助要請をした。
●補記●
当該グループ3人は冬季の伯耆大山が厳しい雪山であることを十分に理解しており、事前の訓練や繰り返しの下見登山をした後、冬季登山の範疇に含まれる山岳滑走として今回の山行を実施している。
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