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2022/05/10

【調査報告】220219唐松沢南滝・雪崩事故

2022年2月19日、北アルプス白馬連峰(長野県)の唐松沢南滝付近で発生した雪崩事故について、捜索救助に関わった方への聞き取りを行いましたので、お知らせ致します。
  
●事故概略●
日 付: 2022年2月19日
時 刻: 不明
場 所: 唐松沢南滝・高巻き斜面(地形図
概 略: 無名沢を滑走したグループ(2人)が、唐松沢南滝の高巻き斜面で誘発した雪崩に巻き込まれた。後続グループによって、部分埋没の1人は生存救助されたが、完全埋没の1人は心肺停止となった。

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図1 地形図・唐松沢南滝付近

  
●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩(ストームスラブ)
規 模: サイズ2
標 高: 1,400 m(上部破断面)
方 位: 北
破断面: 幅 15 m以上、厚さ40-50 cm(写真推定)
傾 斜: 不明
弱 層: 不明
滑り面: 不明

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写真1 発生区

 

●雪崩コンディション●
経過(2月18日まで)
2月15日、風の弱い状態で降雪が始まり、小規模な点発生雪崩が観察される。その後、寒気の南下の影響で大量降雪となり、16日朝までの過去24時間にて、森林帯上部で50 cmの新雪。この荒天の雪の下層に、15日に点発生雪崩を起こしていた低密度の雪があるため、積雪表層付近は不安定となり、サイズ2の面発生雪崩が、山岳エリアで観察される。
 17日も継続的な降雪となったが、強風が吹いたのは主稜線付近のみで、標高が低いエリアではあまり風の影響が出なかった。結果、アルパインエリアにて、18日には前日の荒天の最中に発生したと推定されるサイズ2.5-3の雪崩が観察される。18日は降雪も収まり、雪はゆっくりと安定化の方向に進み始めていた。


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図2 雪崩危険度の推移

当日(2月19日)
荒天のサイクルが完全に終わり、天候が回復。朝は放射冷却で冷え込む。荒天の雪の不安定性は、日射の影響を受ける南斜面、あるいは昇温の影響が強い標高の低いところで急速に解消していった。一方、風の影響のない乾いた低密度な雪があるとても急な斜面、あるいは風が谷筋を降りてきてスラブを形成している局所などで、まだ不安定性は残っていた。

  

●行動●
詳細不明

  

●捜索救助●
14時40分頃、下山途中にあったG1(1人)が頭部のみ出ている要救助者Aに気づき、掘り出し作業に取り掛かる。その約5分後にG2(2人)が現着。G2は、完全埋没の要救助者Bを雪崩ビーコンで位置特定し、捜索開始から8分で顔を出す。その頃、G3(2人)が現着し、Bの掘り出し作業を手伝う。Bは埋没深1.5 mで発見されたが心肺停止のため、すぐにCPRを実施。状況が好転しないため、16時頃、R1がAに付き添い下山を開始。途中、警察および遭対協からなる救助隊と合流。後日の救出のため、Bの位置をプローブでマーキングしたが、続く荒天の大量降雪と新たに発生した雪崩で不明となり、救出は雪解けを待ち、5月8日となった。

  

●謝辞●
調査にあたり、初動捜索救助に関わった方にご助力を頂きました。厚く御礼申し上げます。

  

●補記●
積雪の不安定性が解消していく速度は、積雪を構成する雪や雪温、積雪構造などの「内的要因」と、斜面の方位や標高、風、日射といった積雪に影響を与える「外的要因」によって、かなり異なります。これにより、ある場所では「比較的不安定な積雪」があり、ある場所には「そこそこ安定した積雪」があるという状況が、山岳の積雪には生じます。このような積雪強度のバラツキを「積雪の空間的多様性」と呼びます。冬季の積雪はほとんどの期間において、こうした空間的な多様性を持ちます。よって、雪崩安全対策の最重要事項は「地形選択」であり、その助けとなるようにJANでは雪崩情報を発表しています。

 

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