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2022/03/23
2022年2月23日に糸魚川市島道にて発生した雪崩事故について、速報としてお知らせ致します。数値等は速報値ですので、この後、変更される可能性もあります。
●事故概略●
日 付: 2022年2月23日
時 刻: 夕方(調査中)
場 所: 大沢岳・北斜面(地形図)
概 略: 糸魚川市島道の温浴施設から男性が帰宅しないと消防に通報が入り、捜索を開始。その後、鉾ヶ岳の北に位置する大沢岳からの雪崩によって被災したことが判明。同日夕方から消防・警察等の捜索救助活動が実施され、25日午前、不明者は発見された。
●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩
規 模: サイズ3
標 高: 1,200 m付近(上部破断面)
方 位: 北
流下距離: 約2.3 km
デブリ末端: 標高180 m
見通し角: 24度
補 記: 北面の複数の場所に破断面が存在
●捜索救助●
2月23日15時半頃、男性からの帰宅する旨の電話連絡の後、音信が途絶えたため、温浴施設の住民が17時48分、消防へ通報。18時、消防による初動捜索が開始されるも発見に至らず、22時03分、活動を終了。
2月24日 8時から13人態勢(消防6人、警察6人、他1人)で捜索活動を開始。12時06分、防災ヘリにて孤立している温浴施設の住民2人の救助活動を開始、12時59分、救助完了。14時から要員を増やし、24人態勢(警察12人、消防6人、消防団4人、他2人)で捜索活動を再開。14時55分、車両A発見、15時52分、車両Bを発見。16時20分、活動を終了。
2月25日7時50分から30人態勢(警察13人、消防12人、消防団3人、他1人、重機1人)で車両の掘り出しおよび周辺での捜索活動を開始。11時10分、朝よりデブリ末端から実施されていたラインプロービングにて、不明者を埋没深2 mで発見。11時40分、救助を完了。
図1 大沢岳全景
雪崩は大沢岳の北斜面で発生しており、Bは視認できた破断面。確認できたデブリ末端はA。黄色の線は推定の雪崩流下方向とその範囲。
図2 堆積区の状況
雪崩は砂防堰堤側に延びる高さ20 mほどの尾根を乗り越え、流下している。右手にあった小規模なコンクリート製の構造物は転回。写真右の手前の滑らかな雪面はデブリ。乾雪による大規模雪崩の場合、流下中に雪は細粒化され、一見、通常の積雪のように見えることがしばしばある。
●謝辞●
調査にあたり糸魚川市消防本部より情報提供を頂きました。深く御礼申し上げます。
●参考事項●
雪崩によって樹木や人工構造物が破壊されるのは主に「流れ層」による衝撃圧によるものです。吉村昭氏の小説『高熱隧道』に記述されるホウ雪崩の表現(音速のような爆風で被害が生じた)は誤りです。雪崩程度の速度では空気の圧縮は起こらないとされています。なお、およその「平均衝撃圧と破壊の目安」は以下となります。出典:『雪崩ハンドブック』(東京新聞出版局)
衝撃圧(kPa) 破壊の目安
1 窓ガラスが割れる
5 ドアが押し破られる
30 木造建築物が壊れる
100 トウヒ・松などの成木が根こそぎ倒される
1000 鉄筋コンクリート構造物が動かされる
1986年1月26日23時頃、権現岳(1,104 m)の東斜面で発生した乾雪表層雪崩によって、柵口にて13人の死者が出る雪崩災害が発生しています。今回、雪崩災害のあった島道でも、同日20時半頃、大きな乾雪表層雪崩が発生しています。その詳細は、和泉薫氏・小林俊一氏によってまとめられた「新潟県能生町島道鉱泉の表層雪崩について」(PDF)をご覧ください。
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