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2021/03/20

【調査速報】210314宝剣岳千畳敷カール・雪崩事故

2021年3月14日に宝剣岳千畳敷カールで発生した雪崩事故について、速報としてお知らせ致します。数値等は速報値ですので、この後、変更される可能性もあります。

  
●事故概略●
日 付: 2021年3月14日
時 刻: 8時40分頃
場 所: 八丁坂(地形図
概 略: 八丁坂を登行中の単独登山者と登山講習のパーティ(4人)が、誘発した雪崩に巻き込まれ、2人が部分埋没、1人が完全埋没した。部分埋没の2人は、自力脱出あるいは近傍パーティが救助した。また、完全埋没の1人は雪崩ビーコンによって位置特定がなされ、軽傷を負ったものの生存救出された。

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図1 地形図(赤丸=雪崩現場。地理院地図より)
  
  

●雪崩データ●
種 類: 面発生乾雪表層雪崩(ウインドスラブ)
規 模: サイズ2 (流下距離約300 m)
標 高: 2,750m(上部破断面)
方 位: 南東
破断面: 幅 約80 m、厚さ10- 30 cm(目視による)
傾 斜: 約35°
弱 層: 不明
滑り面: 不明
補記: 3月15日に千畳敷にて積雪データ(SPIN参照)を採取しているが、雪崩が発生した場所とは、斜面方位や風の影響が異なるため、あくまで参考程度のものとされたい。破断面の調査は行われていないため、弱層などの詳細は不明である。

 

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写真1 破断面付近の様子
 

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写真2 堆積区のデブリ

  

●行動●
ロープウェイ山頂駅にあるホテルに宿泊した登山者らは、14日朝、宝剣岳の東斜面を避けるように大きく迂回するルートで千畳敷カールを通過した。その際のラッセルの深さは膝程度であった。先行する単独登山者は八丁坂の登行を順調に進めており、その後方に登山講習のパーティ(4人)が続いていた。そして、講習パーティが本格的な急斜面に入るため、一旦停止してピッケル等の装備準備をしているとき、雪崩は発生した。
 

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写真3 現場全景

  

●捜索救助●
雪崩発生後、単独登山者はデブリ末端付近まで流されたが、自力脱出。その後、救助活動に関わった。一方、講習パーティも全員流されたが、2人はごく浅い部分埋没で、すぐに捜索救助を開始した。講習パーティの残りメンバーの1人は顔と片手が僅かに出る危機的な部分埋没で、もう1人は完全埋没した。危機的な部分埋没者は、かろうじて自ら顔の前の雪を払うことができ、その後は、後続の登山者(2人+1人)の協力で救助された。完全埋没者は、講習パーティのメンバーによるビーコン捜索で位置の特定がなされ、5分ほどで発見された。埋没深は約1mで、発見時、意識不明であったものの、CPRによって意識が戻り、その後、歩行可能となった。警察への通報も行われており、10時半頃にヘリコプターが現着との連絡を受けていたが、強風のため収容できず、要救助者は現場にいたパーティ等の協力でホテルまで戻り、その後、救急車にて病院に搬送された。

  
  
●補記●
・厳しい山岳域
ロープウェイで手軽にアクセスできる千畳敷ですが、そこは標高2,600mを越える厳しい山岳域となります。森林限界を超えたアルパインエリアであるため、低温で風の影響がとても強く、かつまた地形的な安全地帯が極めて限定的な場所です。さらに、長野県南特有の気象傾向から、難しい積雪コンディションが生じやすい地域特性もあります。このため、降雪中や降雪直後の八丁坂を使った登行は、長時間、雪崩の危険に曝され続けるため、極めてハイリスクなルートとなります。

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