JAN MAGAZINES

2021/04/19

【vol.11】臨時雪崩情報・立山山域

立山(富山県)の室堂周辺山域において、まとまった降雪があったため、臨時での雪崩情報(2021年4月19日6時30分現在)をお知らせいたします。写真は4月19日朝の時点での雷鳥荘。18日夕方には除雪されていた入り口が埋まっています。

  

【全体概況】
 完全に春のざらめ雪のコンディションとなっていた室堂周辺の積雪は、4月17日の低気圧の接近に伴う降雨で、表層5~10cm程度が十分に濡れた状態になりました。その後、低気圧が発達しながら冬型の気圧配置となったため、18日昼頃から断続的な降雪となりました。極めて強い西風を伴った降雪は、今朝までに60-80cmを記録し、吹き溜まりでは250cmを超えています。
 昨日の時点で、限定的な観測ながら、旧雪(濡れたざらめ雪)と新雪(18日からの降雪)の境界面の結合が悪い状態が観察されており、行動者によるリモートトリガーでサイズ1.5の雪崩も報告されています。今朝の観察においても、新雪内の結合が弱い箇所を原因として、シューティングクラックが発生しています。降雪は収まりましたが、風がまだ残っており、気温も-9℃(5時50分, 2,430m)と低い状態が続いています。
  

tateyama_rating2.JPG

tateyama_problem.JPG
  

【行動への助言】
 特定の地形で危険な雪崩コンディションです。まとまった降雪があり、それが強い風で移動し、スラブを形成しています。不安定性は新雪内と、新雪と旧雪の境界面、という2つの場所に存在しています。そして、そのいずれもが、あまり良い状態とは言えません。
 このため、現場では地形をよく観察し、上手に移動すること、そして賢い地形選択が重要となります。まず、自分の上部に西風で雪が堆積するような大きな発生区がないか、確認してください。視界が十分になく、それが視認できないのであれば、「不確実性が上がる=リスクが上がる」という理解が必要です。次に、極端な凸状地形や孤立した地形及びそれと露出した岩が組み合わさったような斜面に注意を払ってください。誘発しやすい場所となります。また、斜面の下方が狭い沢状や崖など「地形の罠」がないかの確認も忘れずに。
 斜度を落とし、スムーズな変化を持つ斜面を選び、安全地帯で停止することなどを心がけてください。良い一日を。

  

【補記】
 積雪コンディション変化について、一般的な事項を記載しておきます。今後、天気が良くなり、気温上昇と強い日射が生じた場合、南に面した急斜面での危険度は上昇します。通常は数日で荒天の雪は落ちつていくものですが、北側など日射の影響のない斜面においては、その安定化は遅れる、と考えてください。本日以降、追加の観察情報が入り、コンディションについて特に注意が必要な場合、こちらに追記する形でお知らせいたします。アナウンスはTwitter(@npo_jan)およびFacebookにていたしますので、フォローをお願いします。

  

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2021年4月20日6時現在の状況をお知らせいたします。

  
 
【全体概況】
 昨日(19日)、天気の回復と共に、強い日射の影響を受けた斜面積雪は急速に沈降を進めました。これにより、新雪内の脆弱性は概ね解消していきましたが、旧雪と新雪の境界面付近にある弱層に関しては、まだ十分に解消していないことが観察されています。また、激しい西風の影響で、斜面積雪には広範囲で風紋が刻まれており、風に叩かれる場所では、硬い凍結斜面が露出しています。朝6時の時点で気温-6℃(標高2450m)で、天気は良いものの、風が残る予報が出ています。
  

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【発生した雪崩】
 19日10時頃、滑走者の誘発によるサイズ2の雪崩(写真)が、標高2420m、北東の斜面で発生しています。雪崩は3人目の滑走で誘発され、滑走者は部分埋没しています。また、19日朝までの荒天の最中の発生と思われるサイズ2.5の雪崩が、標高2300m付近、南斜面にて観察されています。この他、日中の日射の影響により、露出した岩があるとても急な南斜面にて、サイズ1-1.5の点発生雪崩が観察されています。
  

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【行動への助言】
 北~北東側には、まだ十分に解消していない荒天の不安定性が残っていると考えてください。とても急な、下支えのない斜面などにおいては、誘発はありえます。上記に記載した、昨日の誘発雪崩のように、比較的硬めのスラブにおいては、最初の滑走者が誘発しないことはしばしばあります。既にトラックが入っているからと安心しないように。
 日中、昇温と日射の影響が高まると共に、南に面した急斜面、特に露出した岩がある場所付近からの点発生雪崩にも注意してください。自分の上方に警戒を怠らないように。また、まとまった降雪は、以前のクラックを隠しています。昨日も登山者が、そうした場所を踏み抜いてハマる事案が報告されています。
 雪崩の危険度は下がってきていますが、地形をよく観察し、安全な場所を上手に使ったグループマネジメントを続けるようにお願いします。良い一日を。
  
【補記】
 まとまった降雪となった他山域でも、状況は同じ傾向にあります。昨日、白馬山域においては、荒天中と思われるサイズ2-3の雪崩、誘発によるサイズ2の雪崩などが報告されています。本日で、立山山域の臨時雪崩情報は一旦、終了いたします。

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