JAN MAGAZINES

2020/03/27

【vol.8】高校山岳部の登山

那須岳の事故を受けての検討会

那須岳での雪崩事故(2017年3月27日)を受けて、現在、栃木県では「高校生の登山のあり方等に関する検討委員会」が設置され、既に2回の会議(第一回:2019年10月25日、第二回:2020年2月17日)が開かれています。この委員会は以下の目的で設置されています。
  
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高校生の登山の安全確保を図るため、「那須雪崩事故を教訓とした学校安全のための取組」(平成30年1月9日)の実施状況を検証するとともに、高校生の登山のあり方、安全登山の実現に向けた事業の改善、その他必要な施策について検討を行う。
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そして、第二回の委員会において、遺族の奥勝委員から漸次的に改革を進める建設的な提案「とちぎモデル」が発表されています。
  
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「とちぎモデル」とは、教員に頼らない、専門団体の資格を持ったしっかりとした知識と経験をもつ引率者、責任をとれる県が主体となった登山など、現在の高校山岳部のあり方を根本から変える施策の総称です。

場当たり的でツギハギだらけの対策を行うだけでなく、名をつけても恥ずかしくないほどの、根本的に高校山岳部のあり方を変えるほどの施策を具現化して欲しいとの願いを込めて提案しました。
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私は2回の会議をいずれも傍聴させていただいていますが、奥委員は「提案したものが叩き台となり、具体的な安全体制構築への議論が深まり、実現していくこと」を期待されています。高校山岳部の登山に関心のある皆さまにおかれましては、今後、数ヶ月に一回のペースで行われる会議内容に注視していただければと思います。
  
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今回の委員会では議論にならないかとは思いますが、最終的には、受容リスクレベルの設定とそれに沿った安全スキームを構築することで、高校生であっても雪山登山が楽しめるのが理想だと思います。日本は世界に誇る雪国ですし、夏山で素晴らしい登山体験をした高校生が、より美しく輝く雪山を見て「登りたい」と思うのは自然な感情ではないでしょうか。JANはそのような人をサポートするために活動しています。


なお、サイト改編で閲覧できなくなっていた昨年のレポート「那須・茶臼岳での雪崩事故について ~事故から2年目を迎えるにあたり~」に関して、多数のお問い合わせをいただいておりました。危機管理マニュアルが一部改編されましたので、レポートから危機管理マニュアルに係る別紙の部分を削除したものを再掲載致しました。

レポートでも触れていますが、誰でも同様の事故は起こしえます。レポートに記載した事例以外にも、周囲の斜面で自然発生の雪崩が出ている状況下で発生区を登攀する、あるいは走路を詰めていき、雪崩に遭ったという事故もあります。これらもベテランによるものです。人間とはそういうものなのです。

米国のアルタスキー場で長くSnow Safety Directorを努めたOnno Wieringa氏は「二つの大きな問題。ひとつは何も知らない初心者。もうひとつは、私のように、何でも知っているつもりで、実はそうではないベテランだ」という言葉を残しています。山岳の積雪には大きな不確実性があり、人間にはヒューマン・ファクターがあります。雪山で活動するということは、それを受け入れるということです。忍耐と寛容を。

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